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足臨泣という経穴について徹底解説

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足臨泣という経穴は非常に良く効きます。

良く効くということは、足臨泣に沢山のヒミツがあるからです。

今回は足臨泣について、徹底に解説していきます。

出典

『黄帝内経霊枢』本輸篇 第二

臨泣、上行一寸半、陥者中也。為腧。

足臨泣は侠谿からさか上がること一寸半のくぼみの中にあって、腧穴です。

取穴部位

WHO

足背

第4・第5中足骨底接合部の遠位

第5指の長指伸筋腱外側の陥凹部

◆『甲乙経』

在足小指次指本節後間陥者中。

去侠谿一寸五分。

『新版 経絡経穴概論』

「臨」「泣」の字解き、意味

◆「臨」の字の構成

「臨」の字は 臥+品 で構成されています。

「臥」は人が俯して下を見る形です。

「品」は祝祷(神に祈る)を収める器を並べている形です。

これらの意味から、「臨」は祝祷して上天の霊の監臨する意を示す字であるそうです。

参考文献 『字訓』白川静

◆「臨」という字の意味

・のぞむ、ゆく、およぶ、つく

・高い所から下を見下ろす

・高い身分の人が下位の者のところに来訪する

・てらす、おさめる、たもつ

・むかえる、あたる

・ゆく、およぶ、つく

・とむらう

参考文献『字通』P1630 白川静

「臨」の字の構成や意味から、

身分の高いものをむかえるという意味があり、

東洋医学の考え方に置き換えると、

一番身分の高い”君主の官”である心と関係が深そうです。

◆「泣」という字の意味

・なく

・なみだ

・血滞、しぶる

参考文献『字通』P290 白川静

注目するべきところは、「泣」という字に血滞、渋るという意味があることです。

『素問』五蔵生成篇 第十にも、

血、凝於脈者為泣。

と書かれており、

血が凝滞していることを「泣」という字で表しています。

「泣」は「濇」と同義に用いられることからも、渋滞の意味を表します。

臨泣の経穴名の意味

『針灸経穴名の解説』には、

「泣」は「濇」と同義に用いられ、渋滞の意味を表わす。

滞って通じないということなので「臨泣」と名付けられた。

全ての渋滞鬱塞がある症状には、この穴で通すことができる。

足臨泣は渋滞を通じさせる功能がある。

と記載れています。

人間が泣くとき、涙がちょうど足臨泣という経穴のところにこぼれ落ちるので、臨泣と名付けたという一説があるが、やはり「渋」の字の意味を取って、足臨泣に刺すと通じるとした方が適切である。

と述べています。

参考文献『針灸経穴名の解説』燎原

『経穴解説』では、

「臨」は臨む、「泣する」。

非常に困って苦しんでいる時に臨んだ場合に使うツボである。

と解説しています。

足臨泣の字の意味、経穴名の解説をまとめると、

足臨泣には、

・心との関わりがある

・凝滞、渋滞を通す作用がある

と考えることができます。

経絡 足少陽胆経

足臨泣は、足少陽胆経上の経穴なので、足少陽胆経を通じさせることができます。

足少陽胆経の病証には、

・口苦

・ため息

・胸膜炎

・肋間神経痛

・目の外視の痛み

・首のリンパ節炎

・往来寒熱

などがあり、

足少陽胆経の病変として起こっているこれらの症状には、足臨泣は有効です。

足少陽の流注は、身体の外側を非常に複雑に流れています。

この体側を流れるという事は、足太陽と足陽明の間に位置して、これらと密接な関わりを持っているという事です。

足太陽と足陽明の‟枢”である足少陽を慢性的に患うと難病に陥り易くなり、難病に限って少陽枢機に異常を起こして戻りにくくなっていることも事実です。

なので、足少陽を疎通しておくことが非常に重要なのです。

臓腑 胆

足少陽胆経の経穴であるということは、胆の腑を動かすことができます。

胆の作用や特徴としては、

・決断を主る(精神の働きと関連する)

・肝の働きを助ける(肝ー胆の表裏関係)

・精汁を貯蔵する

・枢を主り、五臓六腑のバランス調整、陰陽の調節をする

などがあり、足臨泣はこれらの胆の作用の失調を改善します。

表裏関係 肝

‟胆”の表裏関係は‟肝”です。

足臨泣に刺鍼することで、表裏関係の‟肝”も動かすことができます。

足少陽胆経は、足臨泣から分かれて、太衝、行間へと巡って、足厥陰肝経に入っていきます。

流注からみても、足臨泣は‟肝”との関わりが深いことがわかります。

子午陰陽 心

‟胆”と子午陰陽関係である臓腑は‟心”です。

‟心”は思考、記憶、感覚に関与し、

‟胆”は最終決断に関与し、

心と胆は精神の機能的にバランスをとっています。

で、足少陽胆経上である足臨泣を使って、心を動かすことができます。

「臨」の字解きで解説したように、

「臨」には身分の高いものをむかえるという意味があります。

五臓六腑の中で一番身分の高いのは君主の官である‟心”です。

ですので、足少陽胆経の中でも、足臨泣はより一層‟心”との関わりが密接であると考えられます。

八脈交会八穴 帯脈

足臨泣は八脈交会八穴の内の一つで、帯脈の主治穴です。

帯脈の病証には以下のような症状があります。

・腹部が膨張する

・腰が冷えてふわふわして力が入らない

『難経』29難

・下腹部痛

・裏急後重

・ひきつけ

・月経不順

・帯下

『明堂』

・臍の横の痛み

・腰脊の痛み

・陰股の痛み       

『脈経』

これらの症状に対して、足臨泣はとても有効ということになります。

足少陰腎経の経別は、第十四椎(第2腰椎)から出て、帯脈に属します。

なので、帯脈と足少陰腎経(経別)は密接に関わるのです。

帯脈の病証に「腰から下が水の中に浸かっているいるような感じがする」という症状があり、これは腎の兆候だろうと考えられます。

足臨泣で帯脈を動かすということは、足少陰腎経(経別)にも作用させているということになります。

「」

五行穴 兪木穴

足臨泣は兪木穴です。

兪穴の「兪」には、

兪穴は体重節痛を治します。

下記の症状は脾の病であり、体重節痛の類です。

・飲食の味覚を失う

・嘔(吐く)

・噦(しゃっくり)

・噎(食べ物が喉につかえる)

・噫(げっぷ)

・吐瀉や腹痛

・腹部の膨張や水腫

・黄疸や消中(消渇の一種)

・痞気(胃部のお盆を伏せたような積塊:脾積)やその他積塊

・虫癖(寄生虫による積塊)や疳積(脾疳)

・肌肉の蠕動

・四肢の癱瘓(脳出血などによって四肢が使い難くなる病)

・羸痩や困倦

このような脾の病に兪穴は有効なので、兪穴である足臨泣は脾の病にも効かせることができます。

参考文献『難経鉄鑑』広岡蘇仙 『ハイブリッド難経』割石務文

交会 足太陽膀胱経

足臨泣で足太陽膀胱経と交会します。

足臨泣の反応は、腱の前に出たり、後ろに出たりします。

足太陽の反応が出る場合は、足太陽寄りである腱の後ろ側に出ていることが多いです。

『経穴解説』P355

ですので、足臨泣は、足少陽を動かしながら、足太陽にも効かせることができるのです。

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